関節面の相互作用が恐竜の運動関節ポーズを区別する

解説

 この論文では、絶滅した恐竜の関節の動きを、骨の形から推測する新しい方法を提案しています。恐竜の関節の動きを知ることは、恐竜の歩き方や走り方、生態や進化についても理解するのに役立ちます。しかし、恐竜の関節の動きを復元するのは難しいことです。なぜなら、化石に残っているのは骨だけで、軟骨や靭帯などの関節を支える組織は消失してしまっているからです。これまでにも、骨と骨がぶつかるところを見つけて、関節の動きの範囲を決めるという方法が使われてきましたが、これだけでは正確な関節の動きを再現できないという問題がありました。

 

 そこで、この論文では、骨の表面の形が関節の動きにどのように影響するかを数値化するという新しい方法を考えました。具体的には、以下のような手順で関節の動きの質を測ります。

 まず、関節を構成する二つの骨の表面に、それぞれ小さな点をたくさん打ちます。この点は、骨の表面の傾きを表す矢印と一緒に考えます。次に、一方の骨の点から、もう一方の骨の表面に向かって線を引きます。この線は、骨の表面の傾きに沿って引きます。この線がもう一方の骨の表面に当たるところを探します。このとき、線が当たった場所の傾きと、線の向きがどれだけ一致しているかを調べます。一致しているほど、骨の表面の形が合っているということになります。また、線が当たった場所の数や、線の長さのばらつきも調べます。当たった場所が多くて、線の長さが揃っているほど、骨の表面がよく重なっているということになります。これらの情報をもとに、関節の動きの質を0から100までの数値で表します。この数値が高いほど、関節の動きがスムーズで安定していると考えられます。

 

 この方法を使って、現生の鳥類であるホロホロチョウとエミューの足の関節の動きを調べました。鳥類は恐竜の子孫であり、恐竜の関節の動きに近いと考えられます。実際に鳥類が歩いたり走ったりするときの関節の動きを測定した結果と比較してみると、関節の動きの質が高いところが、鳥類が使っている関節の動きと一致していることがわかりました。つまり、この方法は、骨の形から関節の動きを正しく推測できることが示されたのです。

 

 さらに、この方法を使って、絶滅した恐竜の一種であるデイノニクスの足の関節の動きを復元しました。デイノニクスは、鳥類の祖先に近い恐竜で、足の第二指に大きな爪を持っていました。この爪の機能については、さまざまな説がありますが、この方法を使ってみると、デイノニクスの爪は、関節の動きの質が高いところに固定されていたことがわかりました。これは、爪を動かすよりも、爪を突き刺すような使い方をしていた可能性が高いことを示唆しています。

 

 このように、この論文では、骨の形から関節の動きの質を数値化するという新しい方法を提案し、現生の鳥類と絶滅した恐竜の関節の動きを比較しました。この方法は、恐竜の歩き方や走り方、生態や進化について、より正確に推測するのに役立つと考えられます。また、この方法は、他の関節の形や動物の種類にも応用できると期待されます。これからも、この方法をさらに発展させて、恐竜の動きについて、深く理解していければいいですね。

ニュース イェール大学

 

要旨

 脊椎動物の機能進化に関する我々の知識は、絶滅した分類群の関節機能に関する推測に依存している。しかし、関節の動きを評価するための厳密な基準がなければ、このような解析は脊椎動物の動きの復元を誤解させる危険性がある。ここでは、レイキャストベースの3次元関節の重なり、対称性、一致性の測定値を統合し、非貫通6自由度の関節配置の定量的な「関節スコア」を計算するアプローチを提案する。この手法を2種の現生恐竜(ホロホロチョウ、エミュー)の後肢二顆関節に適用し、生体運動学との比較から、運動関節のポーズは一貫して関節結合スコアが高いことを見出した。さらに、この関係を利用して、絶滅した恐竜Deinonychus antirrhopusの歩行ストライドサイクルを再構築し、このアプローチの有用性を実証した。より多くの現生動物の関節運動が調査されるにつれて、ここで確立した枠組みは、より多くの関節やクレードに対応できるように拡張することができ、脊椎動物の運動とその進化に関する理解を深めることができる。

論文オープン

Manafzadeh, A.R., Gatesy, S.M. & Bhullar, BA.S. Articular surface interactions distinguish dinosaurian locomotor joint poses. Nat Commun 15, 854 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-44832-z

 

要約

Introduction(序論)

 この章では、絶滅した動物の関節の機能を推定するために、骨の形状から関節の可動域を計算する従来の方法の限界と課題を指摘している。骨と骨の接触を基準にした可動域の推定は、主観的で再現性に欠けるだけでなく、関節の正しい配置や品質を評価する明確な基準がないため、実際に生きていた動物の関節の動きと大きく異なる可能性があると述べている。

そこで、この研究では、骨の形状から関節の配置や品質を定量的に測定する新しい方法を提案している。この方法は、骨の表面の曲率に基づいて、レイキャストと呼ばれるベクトルを発射し、関節の重なり、対称性、一致性を評価するものである。この方法を現生の鳥類の後肢関節に適用すると、関節の配置や品質のスコアが、実際に歩行や走行に使われる関節の姿勢と一致することが分かった。これは、骨の形状が関節の動きに影響を与えることを示唆している。この発見を利用して、絶滅した恐竜の一種であるデイノニクスの足の関節の動きを再構成した。この恐竜は、鳥類の祖先に近いグループに属し、特徴的な第二趾の鉤爪を持っていた。

 この章の目的は、骨の形状から関節の機能を推定する新しい枠組みを提案し、その有用性と応用可能性を示すことである。

 

Results(結果)

 この章では、提案した方法の結果を詳細に報告している。まず、現生の鳥類の二種(ホロホロチョウとエミュー)の足首関節と第三趾の関節について、骨と骨の接触に基づいた可動域の推定と、レイキャストに基づいた関節の配置や品質のスコアの計算を行った。骨と骨の接触に基づいた可動域の推定では、関節の姿勢の空間は広く、実際に歩行や走行に使われる姿勢との関係は明確ではなかった。しかし、関節の配置や品質のスコアに基づいた推定では、関節の姿勢の空間は狭く、高いスコアを持つ姿勢が歩行や走行に使われる姿勢と一致することが分かった。

 

 次に、絶滅した恐竜のデイノニクスの足の関節について、同様の分析を行った。骨と骨の接触に基づいた可動域の推定では、関節の姿勢の空間は広く、特に第二趾の関節は大きな回転を許容していた。しかし、関節の配置や品質のスコアに基づいた推定では、関節の姿勢の空間は狭く、特に第二趾の関節は高いスコアを持つ姿勢が限られていた。

 

これらの結果をもとに、デイノニクスの足の関節の動きを再構成した。この再構成では、第二趾の関節は歩行中にほとんど動かず、鉤爪の先端が地面に触れないように後ろに反り返っていたと推定した。これは、第二趾の鉤爪の機能について、刺すか切るかという議論に影響を与える可能性がある。

 

Discussion(議論)

 この章では、提案した方法の意義と限界について議論している。この方法は、骨の形状から関節の配置や品質を定量的に測定することで、関節の機能を推定するための新しい基準を提供するものである。これは、骨だけから動物の動きを復元する古生物学的な研究にとって有用なツールとなると考えられる。

 

この方法は、現生の鳥類の足の関節に適用すると、関節の配置や品質のスコアが、実際に歩行や走行に使われる関節の姿勢と一致することを示した。これは、骨の形状が関節の動きに影響を与えることを示唆している。また、絶滅した恐竜のデイノニクスの足の関節に適用すると、関節の配置や品質のスコアをもとに、関節の動きを再構成することができた。これは、この方法の応用可能性を示すものである。

 

この方法は、骨の形状から得られる情報に限られていることに注意が必要である。骨以外の関節の構成要素(軟骨、靭帯、滑膜など)や筋肉、腱などの影響は考慮されていない。また、関節の動きには、生物学的な変動や個体差、環境や行動の影響などがあある。これらの要因を調べるためには、現生の動物からさらに多くの実験的なデータを収集する必要がある。

 

この方法は、関節の形状と機能の関係について、より明確に特徴づけることができるものである。これは、関節の機能の進化や適応について理解するための重要な第一歩である。また、この方法は、さまざまな関節の形態や分類群に適用できるように改良することができる。これにより、動物の動きとその進化に関する知識を変革することができると期待される。

 

Methods(方法)

 この章では、恐竜の関節の可動域と関節面の相互作用を計算機モデルで再現する方法について説明している。

まず、現生の鳥類(ホロホロチョウとエミュー)と絶滅した獣脚類(デイノニクス)の下肢の骨の3Dメッシュモデルを作成するために、CTスキャンやレーザースキャンなどの技術を用いた。

次に、各関節の可動域を推定するために、Mayaというアニメーションソフトウェアを使って、骨のモデルを動かせるようにした。関節の回転軸は、以前に提案された古生物学的な基準に従って設定した。

 

さらに、各関節の関節面の相互作用を評価するために、自分たちで開発した「関節レイキャスト」という手法を用いた。この手法では、関節面の曲率を反映した法線ベクトルに沿ってレイ(無限に長い線分)を飛ばし、対向する関節面に当たるかどうかを調べた。レイが当たった場合は、その長さや角度などを計測し、当たらなかった場合は、その関節の姿勢は不適切であると判断した。

 

そして、関節面の重なり、対称性、一致性という3つのパラメータを用いて、各関節の姿勢に「関節スコア」という数値を割り当てた。このスコアは、関節面の相互作用の質を表す指標で、高いほど良いと考えられる。

 

最後に、現生の鳥類の関節の可動域と関節スコアの分布を比較することで、関節スコアが実際の運動に使われる関節の姿勢と一致することを確認した。また、関節スコアの情報を利用して、デイノニクスの歩行時の足の動きを再構成することにも挑戦した。

 

 

以上の方法により、恐竜の関節の可動域と関節面の相互作用を計算機モデルで再現することができた。この方法は、他の関節や動物にも適用できる可能性があり、古生物学的な運動の復元に役立つと考えられる。

 

リンク

恐竜パンテオン本サイト

 

グラファイトダイナソー

 山本聖士さんのサイト

 

「恐竜漫画描いてます」

 所 十三さんのブログ

 

半紙半生

 森本はつえさんのサイト