1-2-3か、2-3-4か。恐竜と鳥の関係を論じるとき、以前は必ず争点になった問題でした。鳥の翼にある3本の指は、第1・2・3指なのか、第2・3・4指なのか。古生物学で始まった議論は発生生物学の研究で決着をつけられようとしています。
この問題は、一応解決していたと思っていましたが、9月4日付でネイチャー電子版に掲載された論文によると、そう簡単に解決はしていなかったようです。
アブストと図を見る限りでは、分かったのは第2指の位置にある前駆細胞から第1指ができるというところまでのようです。
まったく自信はないけれど、アブストをほにゃ訳してみると・・・
「形態学的形質は、発生遺伝子の発現の結果である。形質の同定は、発生を制御する遺伝子制御ネットワークに、結局基づいている。ゆえに、全ゲノムの遺伝子発現データは、形質同定の証拠をもたらすことができる。 このアプローチは1・2・3の細胞型を同定するのに成功裏に用いられてきた。ここで私たちは発生生物学における長年の不確実性、即ち鳥類の翼の第4・5指同定に対処するため、トランスクリプトームデータを使用する。発生学的証拠からは、翼の3本の指は第2・3・4指の位置から発生していると明確に同定されている。しかしながら、古生物学的証拠からは、それらの指が第1・2・3指であると示唆されている。私たちは、翼と足の指のトランスクリプトームを比較し、翼第1指は発生学的には第2のポジションから発生するが、翼第1指と足第1趾を結びつける強力なシグナルを発見した。興味深いことに、私たちの遠位指のトランスクリプトームデータは、後肢の指と比較して前肢の指が高度に分化していることを示している。これらのデータから、鳥類の幹系統において、第1指がポジション1からポジション2に転位を経たことを示し、さらに、翼の遠位指は、これまで鳥類の指の同定について提案されたどのようなモデルとも相容れないユニークな同定であることを示している。
Zhe Wang, Rebecca L. Young, Huiling Xue & Günter P. Wagner
Transcriptomic analysis of avian digits reveals conserved and derived digit identities in birds
Nature(2011)doi:10.1038/nature10391