2013年

12月

15日

映画「ウォーキング with ダイナソー」を観て

 2013年12月20日から公開される、映画「ウォーキング with ダイナソー」の試写会に行ってきました。感想を少々。

期待していなかったが…

 観る前は、さして期待していなかった。どうせお子様向き?

短い予告編を見る限り、パキリノサウルスのビルドゥングスロマンかな?というところ。

 映画は意外なシーンから始まった。現代のアラスカ。恐竜化石を掘りに行くところからだ。叔父と甥・姪の3人。自動車のダッシュボードには、ゴルゴサウルスの折れた歯。しかし、これが結末にむすびつく巧みな導入だった。

 

白亜紀末のアラスカへ

 さて、時代は一気に7000万年前に飛ぶ。パキリノサウルスの営巣地。パンテオンの読者ならご存じだろう。トリケラトプスより数百万年前に生息していた角竜。とがった角というより、鼻づらに分厚いこぶのような角をもつ。主人公のパッチは兄たちとまだ巣の中。一番小さいパッチは母親の与えるエサにありつくのも一苦労。巣の外は危険がいっぱいだが、両親に守られている。まず、このあたりで古生物学的リアルさはどうだろうと、批判的に観ていた。ところが、これが結構いい!もちろん映画として仕立てている以上、恐竜にある程度デフォルメされた部分はある。しかし骨格から始まる基本は、しっかり押さえられている。頭のフリルにしても、子ども、青少年期、大人、成長段階に応じて描かれている。成体のフリルの形を見ても、個体差がある。決して一つの原型から量産したものではない。背景となる自然は、白亜紀末だから、現代と似通っているはず。背景は実写でアラスカやニュージーランドで撮影したもの。そして、驚くことは、背景と登場する恐竜たちが本当に一体となっていることだ。当時の自然の中で、生きている彼らを撮影したと言われても信じてしまいそうなレベルだ。さすがだ。

 

主人公パッチの成長

 パッチは兄と頭突きの練習をしたり、初恋の経験をしたりして成長を続ける。やがて季節は秋、渡りの季節だ。彼らの父親がリーダーとなって率いる群れは、南に旅立つ。しかし、旅の途中、彼らの父親はゴルゴサウルスに襲われ、子を守るため自らの命を投げ出す。母親も戻ってこなかった。もう、自分を守ってくれる者はいない。強く生きろ!自分に言い聞かせ、歩き続ける。やがて初恋の彼女の群れに合流し、南への旅は続く。いつの間にか彼らと一緒に私も旅を続ける。それほどストーリー展開はうまく、私のような斜め見の観客さえ引き込んでしまう。

 こうして渡りの旅は何回も続き、やがてパッチの兄がリーダーの座を勝ち取る。しかし、彼は自己中心的で、逆らう者には容赦しない。遂に弟パッチまで追放する。パッチとていつでも勇者ではありえない。一時は翼竜や小型肉食恐竜に食べられてもいいと言うほどの状態だった。が、守るべき初恋の子を思い出し、群れに復帰すべく歩き始める。

 兄の群れは、かつて父親を倒したゴルゴサウルスたちに襲われる。兄は一人でゴルゴサウルスと闘うが、命は絶える寸前。が、勇気を奮い起こしたパッチが先頭に立ち、群れの皆でゴルゴサウルスと闘う。彼の頭突きでゴルゴサウルスの歯が折れ、飛び散る。パッチは真のリーダーになり、やがて初恋の子と巣をつくり、卵からかつての自分のような子が生まれる。

 

私たちも共に歩いてきた

 ここまできて、あらためて映画の題名に気づく。「ウォーキング with ダイナソー」。

文字通り、観客の私たちは、彼らと共に歩いてきたことに気づくのだ。白亜紀末の壮大な自然の中で、共に生きてきたのだ。お子様向けどころか上質のエンターテイメントだ。もちろん、子どもにとっても大好きな恐竜がたくさん出てくる素晴らしい映画だ。しかし、最良の童話が大人にとっても魅力的なのと同様、魅力的な映画だ。3歳から80歳までいや、100歳を超えた人にもお勧めできる。恐竜ってこんなに魅力的な生き物なんだと、気づかせてくれるだろう。

 

補足

古生物学監修:欧米の研究者が4人以上入っている。プレス資料には書いてないが、映画画面に、フィリップ・カリーとトム・ホルツの名があったのは覚えている。日本側の監修者は国立科学博物館の真鍋真研究主幹。微細にわたり最新の研究成果が生かされている。

恐竜名:しかし、脇役の恐竜の名には差がある。エドモントニアとおぼしきものは、アンキロサウルス類、翼竜にいたってはプテロサウルス。日本人としてはそれぞれ属名まで明らかにしてほしいところ。欧米の常識では彼らはあまりなじみがなく、どうでもよい存在なのかも。

ゴルゴサウルス:少し羽毛を生やしていてもよかったのでは?集団で狩猟をしたという研究があるかどうか、私にはわからない。

エドモントサウルス:とさかがついていたという研究が発表されたのは、12月13日。当然、映画の中のエドモントサウルスにとさかは無い。しかし、それを指摘できるのが恐竜好きの楽しみではないだろうか。

表情:恐竜だから、哺乳類のような表情はつけられない。しかし、顔の角度や瞳などで、微妙な感情の動きを表現している。うまい!

声優:主人公パッチ役は、木梨憲武。子ども時代から彼の声。これがあまり違和感ない。不思議なものだが、そこが演技力なのかも。なお、せりふは恐竜の声にかぶせた形になっている。

シーン:ゴルゴサウルスに襲われるなどのシーンはあるが、血が飛び散るなど残虐な場面はない。幼児が観ても大丈夫。

3D:観るなら絶対3D!自然な立体感で観ることができる。

 

公式サイト  BBC EARTH Walking with Dinosaurs

 

リンク

恐竜パンテオン本サイト

 

グラファイトダイナソー

 山本聖士さんのサイト

 

「恐竜漫画描いてます」

 所 十三さんのブログ

 

半紙半生

 森本はつえさんのサイト