カムイサウルス、プレス発表から

カムイサウルスの説明をする小林教授
カムイサウルスの説明をする小林教授

カムイサウルスの説明や、その場での質問など、録音から起こせるものをいくつか書き起こしました。

カムイサウルスの特徴や名前の由来、どこが新しいのか

 

小林快次教授:名前の由来:カムイサウルス・ジャポニクスこの名前直訳すると、日本の神トカゲ。私たち研究者の中では、日本の恐竜の神という思いをこめてつけました。というのは、今回のカムイサウルスというのは、日本から数多くの恐竜化石みつかっているが、ここまで完全な全身骨格は今まで例にない初めての発見であり、日本を代表する恐竜化石ということで、日本の恐竜の神という思いを込めて、カムイサウルス・ジャポニクスという名前をつけさせていただきました。じゃ、ちょっと中に入って解説させていただきます。

 

今回、カムイサウルスという新しい恐竜の名前がつけられたんですけども、名前をつけるためには、様々な特徴を世界の恐竜と比較しています。その特徴というものの、ほかの恐竜にも見られるけれどもカムイサウルスにも見られるものという特徴であったり、もう一つにはカムイサウルスにしか見られない特徴というものが、カムイサウルスが新しい恐竜であることが決定的になったという事であります。まず、カムイサウルスしか見られない特徴を紹介します。非常に細かいことなんで、”へー”ぐらいで終わっちゃうかもしれませんが、3つあります。

 

1つは、この下顎の後ろの骨があるんですが、上角骨という、この骨の上に伸びる突起が短い。あともう1つは、頭の骨の後ろにある骨のこの部分なんですが、これ方形骨といいます。方形骨のこの窪みが本来なら真ん中あたりにあるんですけれど、このカムイサウルスはなぜかかなり下にあるという事があげられます。非常にマイナーというか、小さい変化ですが、こういうものを研究でしっかりつかまないと、新しい恐竜とわかったりします。最後の3つ目は、ここに胴椎、背骨がバーっと並んでいて、上に伸びる突起があります。神経棘ですが、神経棘は本来体に対し後ろに傾いているのが通常なんですけれど、なぜかカムイサウルスは、この神経棘が前に傾いている。これがズラーッと並んでいるのがカムイサウルスの特徴、3つの特徴がほかの恐竜には見られない特徴ということで、カムイサウルスは間違いなく新しい恐竜であるということがあります。

 

 

それ以外にどんな特徴があるか、特徴の組み合わせというのがあるんですけど、それは挙げると沢山あるので、その代表のものを挙げたいと思います。1つはこれ、カムイサウルスの頭がちょっと可愛いような感じがあるんです。それはなぜかと言うと、頭が全体的にちょと高いということがあったりします。あとは、これもいろんなところから指摘を受けるんですが、前足が若干短いというか細いというところがあるんですが、私たちの研究の中では、この上腕骨が非常に華奢にできている、細いというものも、特徴の一つとしてあげられています。その他、沢山あるんですけれど、こういう風に全体的に見たときには、頭がずんぐりしていること、前足が華奢であるということも、あるんですが、今回論文でもう一つ明らかになったことがあります。それは、カムイサウルスに、今、この状態なんですが、実は骨でできたトサカがあったのではないかという事、今回の論文で議論して、可能性がかなり高いという風に論文で議論しています。今これは実は古いスタイルでこれで恐竜博2019を開催しておりましたが、今日から新しいカムイサウルスとして、トサカがついた状態の復元にしようと思います。今そのトサカをつけようと思います。少々お待ちください。・・・(取り付け)

 

変化は殆どわからないと思いますが、これは北米から見つかっているブラキロフォサウルスという恐竜があるんですが、それに、似たような非常に薄い平たいトサカが頭の上についていたというように、私たちは論文で述べております。なので、パッと見、変化はあまりよくわからないかも知れないですけれど、このような薄い平たいトサカがあったのではないかというふうに、論文のほうで研究して、これはまあ、非常にマイナーなことかもしれないですけれど、こういうふうなトサカは飾りとして、カムイサウルスの子孫を残すために、非常に重要な役割をしていたいうトサカですので、今日から新・むかわ竜、カムイサウルスとしてこのような復元骨格を恐竜博2019で一般公開します。以上です。

 

質問:今回の発表で、世界の恐竜の研究の中で今回の新しい発見というのがどのような位置づけにあるのか。また今後、日本における恐竜研究において、何か訴えかけるようなこととかありましたら教えてください。

 

小林:今の質問、2つあると思うんですが、日本において、私たち日本人においてどういう重要性があるかということと、世界の恐竜研究においてどういう重要性があるか、この2つの質問として答えます。まず、日本の恐竜研究としては、これだけ全身が揃っている恐竜というのは日本で初めてであるというと、要は、この日本というのは、今までは恐竜の情報というのはどうしても海外の恐竜、そこから得られる情報に頼っているところがあったんですが、ようやく日本の恐竜も世界レベルに達することができた。このむかわ竜、カムイサウルスが、日本の持っているポテンシャルの高さを示してくれていると思います。これまでは、決してそれが悪いという訳ではなくて、部分骨が多かった日本の恐竜。今後はカムイサウルスの発見によって日本全国でこのような全身骨格が発見される可能性というものを指し示したかとおもっています。

 

 今度は世界的な話ですが、カムイサウルスは、実はハドロサウルス科という恐竜ですが、先日、中国の研究者がこの展示にいらして、その先生もハドロサウルス科の専門家なんですが、「中国からもここまで完全なハドロサウルス科の骨格は出ていない」というとこで、アジアでも非常に超一級の恐竜化石である、当然それだけではなく、東アジア-中国・ロシア・モンゴル・日本・韓国を含めた-新しい恐竜像、恐竜ワールドが、このカムイサウルスによって描かれることとなります。しかもこのカムイサウルスの素晴らしいところは-恐竜時代って2億3千万年前から6600万年前までという長い時代があったんですが-この恐竜は、ティラノサウルスそしてトリケラトプスと同じ時代に生きていた恐竜であるということがあります。これまで、白亜紀末と言うのですけれど、ティラノサウルスの時代というのは、恐竜の大繁栄した時代の象徴と言われますが、その中でようやく日本のカムイサウルスがそのメンバーとして参加して、世界全体のティラノサウルスの時代または恐竜が絶滅する直前の、恐竜が大繁栄した生態系というものを、この日本から発信することができます。

 さらにカムイサウルスというのは、海の地層から発見されておりまして、世界的にも海の地層から恐竜化石はあまり出ていません。その中で恐竜時代の海辺の世界はあまり描かれていなかったんですが、今回カムイサウルスの発見・研究によって、恐竜時代の海辺の世界、そして海辺の世界がいかに恐竜の進化にとって重要であったかということが明らかになりました。どういうことかと言いますと、カムイサウルスが属するハドロサウルス科という恐竜のグループですが、恐竜の中でも最も植物を食べるのにすぐれた恐竜として知られています。口の中で食べ物をよく噛んで消化できるのですけれども、口の中で良く噛むことができることにより、ハドロサウルス科が恐竜の中でも最も繁栄しました。カムイサウルスの研究により、ハドロサウルス科の起源、実は海辺、海岸線が鍵になっていたことを、今回論文で行っていますので、このカムイサウルスの研究が、世界の恐竜研究においても大きなインパクトを与えたということですね。

 

リンク

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