国立科学博物館 特別展「恐竜博2023」 “奇跡の赤ちゃん恐竜”を見逃すな! スキピオニクスの世界で唯一の実物化石を展示中

 国立科学博物館(東京・上野公園)では、2023314日(火)から618日(日)まで、
特別展「恐竜博2023」(主催:国立科学博物館、NHKNHKプロモーション、朝日新聞社)を開催中です。


 開幕から多くのお客様でにぎわう本展に、324()から新たな実物化石が加わっています。
前期白亜紀に生息した小型獣脚類のスキピオニクス。普通は化石に残らない内臓まで保存されている、世界的にもきわめて貴重な標本です。


 スキピオニクスは1980年にイタリア南部の石灰岩層で化石コレクターによって発見されました。
発見者が93年まで自宅で保管しており専門家の目に触れることがありませんでしたが、ミラノ自然史博物館が同標本の研究をすることになり、98年にスキピオニクス・サムニティクスという学名が発表されました。現地では「チーロ」という愛称で呼ばれています。


◆イタリアの至宝、初めての国外展示◆
 スキピオニクスは未だにこのホロタイプ標本1体しか発見されておらず、
イタリア本国でも国宝級の扱いで厳重に管理されています。同国外に持ち出されるのは、発見以来これが初めてです。


◆内臓が残るきわめて珍しい化石◆
 この個体は、孵化してから3週間未満の幼体だと考えられています。尾の後半は残っていませんでしたが、全長50cm、体重 200gほどだったと推定されています。論文掲載時から世界中の注目の的となった理由はなんといっても、内臓などの軟組織まで奇跡的に化石になっていること。気管や食道、肝臓、筋肉などがさまざまな組織が確認されていて、腸はひだ構造まできれいに保存されているほか、胃の中にはトカゲ類や魚類の骨が残っていました。

【本展監修の真鍋真 国立科学博物館・副館長のコメント】
 「2011年頃から、恐竜博を開催するたびにイタリアに借用を依頼してきましたが、このたびついに実物を日本でお披露目することができて、
私がいちばん興奮しています。「ミイラ化石」と呼ばれるような化石は他にもありますが、内臓の形が肉眼で確認できるのはスキピオニクスが一番です。
これは実物化石でないと実感できないことです。ぜひスキピオニクスに会いにきてください。」

【「チーロ」研究の第一人者、クリスティアーノ・ダルサッソ博士(ミラノ自然史博物館)のコメント】
 「「チーロ」がイタリア国外に出るのは史上初のことです。「恐竜博2023」は、イタリア初の恐竜としてスキピオニクスが19983月に『ネイチャー』誌の表紙を
飾ってから25周年を祝うのにふさわしい場でもあります。このユニークな恐竜を研究し、その科学的価値を一般の人々にも広めるために長年費やしてきましたが、今回チーロとともに来日できることを誇りに思います。私にとって、この恐竜は息子のような存在なのです」


この“奇跡の赤ちゃん恐竜”の実物化石の展示は東京会場の会期終了の618()まで。
「恐竜博2023」の入場には展覧会公式サイトからの事前予約が必要です。連日予約枠が満枠となっています。平日のご来場、お早めのご予約をお勧めします。 
※大阪会場ではレプリカ標本を展示する予定です。

クリスティアーノ・ダルサッソ博士(右)
クリスティアーノ・ダルサッソ博士(右)

 2023年4月10日、「チーロ」研究の第一人者、クリスティアーノ・ダルサッソ博士(ミラノ自然史博物館 写真右)が来日し、その発見から研究のあらましについて解説しました。

以下は、博士の解説から抜粋です。

 1980年11月22日に化石コレクター、ジョバンニ・トデスコ氏がイタリア南部カンパニア州ベネヴェント県、Petraroiaという町にある石灰岩採石場で発見したが、その翌日、同地方は地震にみまわれトデスコ氏はイタリア北部の自宅に帰り、その後10年ほど化石の存在は忘れられていたそうです。

 その後、クリーニングおよび保護のため樹脂が化石に塗られる。トデスコ氏は、この時点ではトカゲだと思っていたそうです。

 1993年、ジュラシック・パークを観たトデスコ氏は、もしかすると恐竜かもしれないと気づき、ミラノ自然史博物館に電話し、ダルサッソ博士の仲間に連絡。

スキピオニクス    カゼルタ・ベネヴェント地方考古学・美術・景観監督局所蔵
スキピオニクス    カゼルタ・ベネヴェント地方考古学・美術・景観監督局所蔵

 ダルサッソ博士は仲間から電話連絡を受けたが、前肢に指が3本しかないと言われた時点で恐竜とわかり、一晩眠れなかったそうです。というのは、白亜紀のイタリアはテチス海の一部で、恐竜はいないと思われていたからです。

 化石標本はイタリア国家に引き渡され、まず、大衆誌"OGGI"に恐竜の記事を書く際にまだ名前が無かったので愛称として「チーロ(Ciro)」と名付けられたそうです。これは産出した地方で子どものあだなによく使われるとのことでした。

この標本を管轄する文化財保護委員会に研究と再クリーニングの申請をし、1994~97年に研究。ダルサッソ博士たちは、1998年3月26日、ネイチャーに記載論文を掲載、学名Scpionyx samniticus とつけられました。属名は古代ローマの大将軍、またこの地で化石が産出することを発見した地質学者にちなみ、それに爪(スキピオのカギヅメ)。種小名はベネヴェント県が含まれる地方の古名です。なお、イタリア語では「シピオニクス」と発音するそうです。

 ネイチャーの論文は比較的短いので、その後2011年に280ページあまりのモノグラフが出版されました。

クリスティアーノ・ダルサッソ博士
クリスティアーノ・ダルサッソ博士

スキピオニクスの特徴

ダルサッソ博士の解説から、いくつか特徴をあげます。

頭骨 顔はあまり深くない平面的だが眼は大きい。頭の前と後ろの骨が癒合していないことから幼体とわかる。孵化後、長くとも10日くらい。親と一緒に生きていて、恐らく嵐に襲われ流されて浅瀬で溺死という仮説を立てている。

一番の特徴は、内臓が残されていることで、標本の色の薄いところが軟組織。

特に不思議に思った箇所は(※前肢の肘関節周辺)に赤い色が化石の下の堆積物に染みていること。これは液体だったことを示している。サンプルを採り分析すると鉄分の数値が高い。鉄分は化石の他の部分や堆積物には無し。よって、赤い部分は血を作る臓器の中に入っていたのだろう、血の化石と考えられる。

腸の中には毛細血管、血球、(球状の)バクテリアが確認できる。

尻の後ろあたりの筋肉で(尾大腿筋)その中の細胞を見ることができ、随意筋の構成がわかる。

体内には食べた獲物(魚やトカゲ)が確認できる。トカゲの大きさはスキピオニクスと同じくらい大きいので、親が捕らえて与えたものではないだろうか。

この研究中に中国からシノサウロプテリクスが発見された。羽毛恐竜として有名だが、スキピオニクスにも羽毛があったのではないだろうか。

 他に筆者のした質問で、今年3月末に、スキピオニクス標本を裏側からCTスキャンしたというニュースが英文で流れた。スキャンの結果わかった事は本展に反映されているのかと尋ねたところ、マイクロCTスキャンをしたのは12月で、そのデータは整理中、本展には反映されていないとのことでした。今後スキャンしたデータにより研究が進展することを期待したいですね。また、スキピオニクスの成体はどのぐらいの大きさと推測できるか尋ねたところ、コンプソグナトゥス科の近縁な恐竜から考えて1.8~2mくらいではないだろうかとのことでした。

【特別展「恐竜博2023」 THE DINOSAUR EXPO 2023  開催概要】
<東京会場>

◆展 覧 会 名 : 特別展「恐竜博2023

◆会期 : 2023314日(火)~618日(日)

◆会場 : 国立科学博物館(東京・上野公園)

◆開館時間 : 9時~17時(入場は1630分まで)

※ただし、毎週土曜日、4月30日(日)~5月7日(日)は19時まで延長(入場は1830分まで)
※常設展示は17時閉館(入場は1630分まで)、429()57()18時閉館(入場は1730分まで)

◆休館日 : 月曜日

※ただし、51日・612日は開館

◆入場料(税込) : 【一般・大学生】2,00円 【小・中・高校生】600

※未就学児は無料。日時指定予約は必要となりますのでご注意ください。
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。日時指定予約は必要となりますのでご注意ください。
※本展では時間帯ごとに定員を設けております。そのため、ご入場されるお客様は展覧会公式サイトより日時指定予約が必要です。
当日、博物館で販売する当日券での入場枠も設けておりますが、ご入場までお待ちいただく場合があります。
入場枠が完売した際はご入場いただけません。

※学生証、各種証明書をお持ちの方は、入場の際にご提示ください。
※本展を観覧された方は、同日に限り常設展示(地球館・日本館)もご覧いただけますが、常設展示の開館時間内に限ります。
※一度購入されたチケットのキャンセル・券種変更・払戻・再発行はできません(ただし、「アソビュー!」のみキャンセル可能)。
※再入場はできません。
※会場内の混雑等により、ご入場をお待ちいただく場合がございます。
※土、日曜日、祝日および会期末はご予約・ご購入いただけない可能性が高くなりますので、早めのご予約・ご購入をおすすめします。
※マスクの着用は個人の判断が基準となります。

◆アクセス : 〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20

JR「上野」駅(公園口)から徒歩5
東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」駅(7番出口)から徒歩10
京成線「京成上野」駅(正面口)から徒歩10
※敷地内に駐車場および駐輪場はございません。

◆主催 : 国立科学博物館、NHKNHKプロモーション、朝日新聞社

◆協賛 : INPEX、鹿島建設、GakkenDNP大日本印刷

◆学術協力 : ロイヤルオンタリオ博物館

◆監   修 : 真鍋 真(国立科学博物館 副館長)

◆公式サイト : https://dino2023.exhibit.jp

◆公式Twitter : dinoexpo2023

◆公式Instagram : dinoexpo2023

◆お問い合わせ : 050-5541-8600(ハローダイヤル) 03-5814-9898FAX

*会期などは変更になる場合がございます。
*チケット各種、入場方法等の詳細は、展覧会公式サイトをご確認ください。

<大阪会場>

◆会期 : 202377日(金)~924日(日) 

 

◆会場 : 大阪市立自然史博物館(大阪・長居公園)

リンク

恐竜パンテオン本サイト

 

グラファイトダイナソー

 山本聖士さんのサイト

 

「恐竜漫画描いてます」

 所 十三さんのブログ

 

半紙半生

 森本はつえさんのサイト