要旨
北海のオランダ沖のブラウンバンクという場所から、大型の始新世のバシロサウルス科の化石が多数発見されている。これらの化石は、以前にいくつかの論文で記載されており、大型のパキケトゥスの細長い椎骨(モルフォタイプ1b)、大型の「ドルドン科」のバシロサウルス科の細長くない椎骨(モルフォタイプ2)、新しい未命名の分類群の「短縮」した椎骨(モルフォタイプ3)の3つのモルフォタイプに分けられる。本研究では、これらの化石の中から、小型のパキケトゥスの椎骨(モルフォタイプ1a)を記載する。この椎骨は、他のモルフォタイプ1bの椎骨と比べて、椎体の長さが短く、椎体の高さが高く、椎体の前後の端面が平らであることが特徴である。また、この椎骨の内部構造と血管化を、CTスキャンと3D再構成の技術を用いて、他のモルフォタイプの椎骨と比較した。その結果、モルフォタイプ1aの椎骨は、他のモルフォタイプの椎骨と比べて、椎体の内部に空隙が少なく、血管の分布が均一であることがわかった。これらの特徴は、モルフォタイプ1aの椎骨が、他のモルフォタイプの椎骨よりも成熟度が高いことを示唆している。モルフォタイプ1aの椎骨は、北海のバシロサウルス科の化石の中で最も小さく、最も古いものである可能性がある。この椎骨は、パキケトゥスの分類学的位置づけや、バシロサウルス科の進化史に関する新たな知見を提供する。
論文オープン
van Vliet HJ, Bosselaers MEJ, Munsterman DK, Dijkshoorn ML, de Groen JJ, Post K. 2024.
A vertebra of a small species of Pachycetus from the North Sea and its inner structure and vascularity compared with other
basilosaurid vertebrae from the same site. PeerJ 12:e16541 https://doi.org/10.7717/peerj.16541
AIによる論文要約
Introduction: この章では、パキケトゥス属とバシロサウルス科の分類や進化に関する先行研究の概要と、本研究の目的と方法について説明しています。本研究では、北海で発見されたパキケトゥス属の椎骨の形態や内部構造をCTスキャンやヒストロジー(骨組織学)で調べ、他のバシロサウルス科の椎骨と比較しました。
Materials and Methods: この章では、本研究で用いた化石標本の出所や保存状態、CTスキャンやヒストロジーの手法や条件、比較対象とした他のバシロサウルス科の椎骨の情報について詳細に記述しています。
Results: この章では、本研究で得られた結果を、椎骨の形態や大きさ、内部構造や血管化の程度、ヒストロジーの特徴などの観点から、図や表を用いて報告しています。また、他のバシロサウルス科の椎骨との比較も行っています。
Discussion: この章では、本研究で得られた結果に基づいて、パキケトゥス属の分類や系統、生態や生理、進化や分化などについて考察しています。また、他のバシロサウルス科の椎骨との違いや類似点についても議論しています。
Conclusions: この章では、本研究の主な結論として、以下の点を挙げています。
北海で発見されたパキケトゥス属の椎骨は、他のバシロサウルス科の椎骨と比べて小型で、形態や内部構造にも独自の特徴がある。
パキケトゥス属は、バシロサウルス科の中で最も原始的なグループであり、他のグループとは早期に分岐したと推定される。
パキケトゥス属の椎骨の血管化は、他のバシロサウルス科の椎骨よりも低く、体温調節や代謝の能力にも差があった可能性がある。
パキケトゥス属の椎骨のヒストロジーは、他のバシロサウルス科の椎骨と類似しており、成長速度や寿命には大きな違いがなかったと考えられる。