2013年

11月

28日

鉄は化石遺骸の中に古代の組織を隠し保存する

 発掘される化石の中に軟組織が発見されることは、なかなかありません。しかしノースカロライナ州立大の Mary Schweitzer らの研究によると、血液中のヘモグロビンに含まれる鉄分に関連して軟組織のタンパク質が検出されるということです。

(a–c) µ-XRF maps of HB-incubated ostrich, B. canadensis (MOR 2598) and T. rex (MOR 1125) vessel tissues at 3 µm resolution, with locations of analysis identified by white numerical labels, illustratin
(a–c) µ-XRF maps of HB-incubated ostrich, B. canadensis (MOR 2598) and T. rex (MOR 1125) vessel tissues at 3 µm resolution, with locations of analysis identified by white numerical labels, illustrating the intimate association of Fe with each vessel tissu

ノースカロライナ州立大プレスリリースより; 

 Schweitzerらは、2005年にT-REX化石中のタンパク質の存在を報告しています。しかしこれについては議論が続いているようです。そのような長期間タンパク質が保存される化学的プロセスが理解されていないためです。しかし、彼女らの最新の研究では、赤血球中の鉄含有分子、ヘモグロビンが化石中にもともと存在したタンパク質を保存し隠す両方の鍵となっているかもしれないことが示されています。「鉄は生存に必要だが、一方生組織に対し高反応で破壊的でもあるが、そのことは、私たちは鉄分子をそれを必要とする体の組織に輸送するが、同時に望ましくない破壊から保護するタンパク質を保有している理由だ」と彼女は述べています。

 ヘモグロビンが鍵のようです。鳥類とワニ類、恐竜に最も近縁な両者は、有核赤血球を有しています。そのため両者は哺乳類より細胞あたり多くのヘモグロビンを含有しています。恐竜の血液細胞もこれらと同様であれば、それはありそうだが、ヒトより多くのヘモグロビンを含有し、組織に対する鉄の保存効果を増したでしょう。砂岩環境でヘモグロビンが骨に含まれていれば、乾燥が保たれると共に微生物から守られ、保存される可能性が高くなります。

 Schweitzer とそのチームは、鉄粒子が恐竜の中に保存されている軟組織と親密に関連していることに気づきました。しかし、彼らがT-REXや Brachyolophosaurus から取り出された軟組織から鉄をキレート化あるいは除去しようとすると、キレート化された組織は、タンパク質の存在を検出する抗体にはるかに強く反応し、そのことから鉄がこれら保存された組織でタンパク質の存在を隠すことができることを示唆しています。そこで彼らは現生のダチョウ骨から血管と細胞を用いて、保存仮説を検証しました。彼らはこれら血管の一方を赤血球から採取したヘモグロビンに浸し、他方を水中に浸しました。水に浸した血管は、1週間も経たないうちに劣化したのに対し、ヘモグロビンに浸したものは、2年経過しても無傷のままでした。

「私たちは、良好に保存された化石が発見されると、そこに鉄分が多量に存在していることを知っている。それらの動物の死後、おそらくヘモグロビンが非常に豊富な環境になったため、骨中の血管組織を発見しました。」と、Schweitzer は述べています。「また、私たちは、鉄がタンパク質を検出しようとするあらゆる手法を妨げることを知っています。ですから、鉄は保存メカニズムと、私たちが保存されているタンパク質の検出と分析に問題を抱える理由、両方であるように見えます。」

アブストラクトほにゃ訳

 中生代化石骨中の元々の軟組織の持続性は、現在の化学分解モデルによっては説明されていない。私たちは2つの中生代の恐竜から、透過型電子顕微鏡、電子エネルギー損失分光法、マイクロX線解析および鉄マイクロX線吸収近端構造を用いて、軟組織に関連する鉄粒子(針鉄鉱-αFeO(OH)) を特定した。鉄キレート剤が劇的に複数の抗体に対し化石組織免疫反応性を増加したが、これは化石組織におけるタンパク質保護とマスキング両方の鉄の役割を示唆している。ヘモグロビン(HB)は、架橋結合や過酸化することにより、死後の'組織固定'のために開発されたダチョウの血管モデルを室温(25°C)で約3日から2年以上、組織の安定性を約200倍以上増加させる。鉄キレート化と相まって、ヘモグロビンが誘起する低酸素状態は、以下のようである:HB + O2 > HB − O2 > −O2 ≫ +O2。

このような呼吸や生体エネルギーのような生命科学ではよく知られているO2/ヘム相互作用は、化石軟部組織の保存におけるO2/ヘム相互作用により補完されている。

Mary H. Schweitzer, Wenxia Zheng, Timothy P. Cleland, Mark B. Goodwin, Elizabeth Boatman, Elizabeth Theil, Matthew A. Marcus and Sirine C. Fakra.(2013)

A role for iron and oxygen chemistry in preserving soft tissues, cells and molecules from deep time

January 2014 vol.281 no.1775 20132741 doi: 10.1098/rspb.2013.2741 論文

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