日本の白亜紀・恐竜図鑑

宇都宮聡+川崎悟司のコンビによる恐竜・古生物図鑑の3作目になる。

 書名が示すように、「生物の繁栄が最も華やかで多様化した時代である白亜紀に焦点をあて」たもの。「日本の恐竜図鑑」、「日本の絶滅古生物図鑑」という前2著で日本の主な古生物は紹介し尽されたと思っていた読者を、見事裏切っている。

 構成は、日本列島の南、鹿児島県薩摩川内市の恐竜化石から始まり、北海道羽幌町の海生ワニに終わる地理順に古生物を紹介している。各々2ページを費やした各産地の古環境復元イラスト、それに2ページと使って本文と標本写真。ビジュアルに優れた作りだが、これだけで日本の古生物のハンドブックとしての役割を十分果たしている。

 加えて、川崎氏は復元イラストだけでなく、「ハルキゲニたんの基礎古生物講座」を執筆し、基礎の基礎、例えば「化石ってなに?」という項目まであるので、超初心者でも安心するのでないだろうか。

 さらに本書の魅力は、著者が恐竜・古生物をキーワードに研究者のみならず原型師やミュージシャンまで旬の人のインタビューをコラムに入れていること。本書に奥行を与えている。チェックを入れる向きには、主な参考文献もリストされているので、この面でも安心できる。

 欲を言えば、白亜紀前期・中頃・後期程度の日本周辺の古地理図と現在の日本の産地を入れた地図があればと思う。前2著にあったとしても、あれば使いでが増しただろう。

 とはいえ、新しい切り口を盛り込んで作り上げた意欲的な「図鑑」であることは、間違いない。パラパラとイラストを眺めるのも良いだろう、開いたページの文章を読むのもまた然り。読者が古生物の魅力に引き込まれたなら、それは著者の大きな喜びとなるだろう。

 

築地書館 2,200円+税 A5判並製 160頁オールカラー 

2015年8月刊行 ISBN978-4-8067-1497-2

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